多くの歯科疾患は、おおざっぱなくくりでいえば「慢性疾患」で、あとはどの段階で患者さんが異常に気づかれるか、いつ来院されるかでその緊急度が異なるだけです。仮に急性の痛みがあっても、組織学的に言えば症状は徐々に進行していたはずですので、やはり慢性疾患の一つと言えます。
しかし、「外傷」は違います。外傷に対する処置は明らかに「救急処置」で、それも歯の命を考えると、「救命救急処置」です。
この救急処置が必要な、歯科における外傷は以下のように分類することができます。
患者さん、親御さん(患者がお子さんの場合)、学校の先生、スポーツクラブの先生にお願いいたいのは、「脱離」以外は、そのままの状態でできるだけ早く来院していただきたいということです。損傷を受けてから時間が経つほど、経過は思わしくないものとなります。
もし、歯が完全に抜けてしまった場合には、よくテレビなど伝えられているように、清潔な容器に牛乳を入れ、その中に抜けた歯を入れて持参してください。
問診、口腔内検査、X線検査を素早く、的確に行い、どのようなダメージが歯や神経、歯周組織に及んでいるかを把握します。もし処置が必要と判断すれば、熟練したスタッフ一同で考えられる理想の処置を施します。顔など口の中以外の部位、あるは顎の骨の大きな骨折など優先すべき処置が他にあれば、関係機関に連絡をとるようにいたします。
写真は2本の歯の複雑な歯根破折と別の1本の挺出性脱臼(折れずに抜けている)、および、上あご真ん中で大きな歯槽骨骨折を起こした患者さんの治療前の写真です。
多くの損傷があり、処置はそれほど簡単ではないのですが、けがをした直後であったこと、受傷歯が幼若永久歯(歯根がまだ十分に完成していない)であったこと、処置が正確であったことから、抜歯も考えなければならないような歯が、神経も残すことができ、何事もなかったかのように治っています。
「外傷」は最初の処置しだいで結果が大きく異なります。当院は外傷の程度を診断する上で大きな威力を発揮するCTを備えており、経験豊富な歯科医・歯科衛生士が待機していますので安心してご相談ください。